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【書籍】AI vs. 教科書が読めない子どもたち(新井紀子)

AI関連の本を読みたくて日本一時帰国中に購入。 

形式:単行本(特に特別な形式で記載されているわけではないし、後半の読解力調査の結果の論述部分で表やグラフが出てくるが、Kindleで読むには許容範囲かと。)

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

 

全体書評

  • 巷に溢れる「いつの日かAIが人間を超える」「シンギュラリティはいつ来るか」という曖昧な予測に対して、メスを入れつつ現状を説明している。現在のAIの実態を説明する項では、著者が進めてきたプロジェクト(東ロボくん)の試行錯誤と結果を元に、現在および近い将来にAIにできることとできないことを記述し、人間ができることとの違いを分かりやすく説明している。
  • AIはコンピュータであり、その中身は数学をベースに構築されている。つまり数学で実装できる仕事であれば、高度技能職であっても将来はAIにて代替可能となる。それよりもAIが苦手とする文章読解力、レポートを元に行う推量、人間同士の意味を伴うコミュニケーションを必要とする職業へ人間は職替えを行う必要がある。
  • 読解力の不要な単純な仕事しかできない人間、つまりそのような彼らこそ就労の機会をAIに奪われてしまうことを危惧している。

 

  • 本書のメインターゲットは子供がいる(あるいは将来持つ予定の)家庭ではないだろうか。経済雑誌を読んでいるサラリーパーソン、読んでいなくても普通に働いたり子育てして社会生活を送っている世代に、著者は将来の世代への危惧を持つように投げかけている。
  • 読解力が不要な仕事や単調な仕事がAIに取って変わられること、これは学生だけでなく我々社会人も危惧すべきことだ。65歳でリタイアするとして私はまだ30年働く必要がある。AIが私の職を代替するにはリタイア後だろう、と軽視できない。インターネットやスマートフォンが急速に普及したように、AIの元である統計学、ビッグデータの集積、ディープラーニング等々が30年の間に私の業務パフォーマンスを超えてしまうことは懸念しておくべき。
  • 現在の仕事にしがみつくことなく、これからの働き方や自分に何ができるか常に考える必要がある。また私は子供がいないが、次世代の子供たちの教育や将来を考えるうえで、皆が新しい道を模索しなければならないと認識している。
  • 本書籍内には読解力調査の設問がいくつかあり、私はほぼ正解した。この調査のレポートで興味深かったのは、読解力は中学生の年次が上がると共に上昇が見られるが、高校生の学年が上がっても読解力は変わらないこと、そしてなぜ向上するのかは著者自身もまだ明確に把握できていないことだった。私自身の中学生の頃を振り返ってみると、田舎の中学で成績上位、数学が好きだが国語は漢文が得意で読書感想文は大嫌い、三国志(漫画版)と本をよく読み、塾に行っていた。私にどれだけ読解力があるのか?は測れるものがないので不明だ。

本編外のコメント

著者は「AIに期待するなかれ、しかしAIは(読解力が無い)人間ができる単純な作業は既にできる。そのことを恐れよ。」というスタンスをこの書籍で示している。これとは別のスタンスの内容、例えば現在のGoogleやMS等の研究で将来的にAIが何ができるか、ディープラーニングが進んだ将来など、具体的な予測を書いた本を読んでみたい。(特に米国系IT企業に詳しい人やその社員が書いたものが良い。)

 

その他

著者のTwitterを拝見

普段からいろんなことを問い、考えてらっしゃる姿がかっこいいですなぁ。(研究者だから当たり前か。。)

twitter.com

著者の対談記事

うむ、50代ですらAI時代を意識しなければならぬとは。我々30代も、2030年にはAIと共に働くことになると踏まえて、AIの実態や世界のトレンドを追わなければならぬ。PCやインターネットを何気なくなんとなく使っているユーザと、その中身を理解した上で使っているユーザとでは情弱度合いが違うように。

www.newsweekjapan.jp

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